結婚式が終わり、
新婚旅行から帰った先は夫の実家だった。
実家、と言っても、
夫が昨年、自力で建てた家である。
もともと借家だったその場所を、
夫は土地から買って新しく建て直した。
このことは私に一切相談もなく、
結婚した時には、夫は30年ローンを組んで家を建て終わった状態だった。
半年前、両家顔合わせの時に、
姑は「身ひとつで来てください」
と私の両親に得意げに言っていた。
その時私も両親も「花嫁道具はいらないんだ。お金がかからなくて助かるなあ」と良い方に捉えていた。
ところが現実はこうである。
家は家具も家電も実家の荷物で溢れかえっていた。
花柄やらアンティーク調やら、
昭和仕様の家具やモノたちがゴチャゴチャと置かれ、
壁紙は花柄で、
襖には墨絵が描かれていた。
無印良品が好きなシンプルな私の趣味と180度違っていた。
そうか、これでは何ひとつ入らない。
リビングに入ると、
テレビは大音量で何かを放送していたが、
地元の訛りがきつすぎて、圧迫感があった。
勧められてモジモジとダイニングに座ると、
「これ、買っといたから」
姑は嬉しそうに夫婦おそろいの湯呑みにお茶を入れてくれた。
全く私の趣味ではない湯呑み。
つまり、ここは夫が建てた家だが、
間取りは自分の両親と相談して建てた家であり、
荷物もそっくり、実家のもので埋まっていて、
そこに私が『嫁に入る』形になっていたのである。
とにかく、アウェイ感ハンパない。
居心地が悪くて仕方がない。
その時、私は自分の判断がいかに軽率だったのかを知ったのだった。