私の実家は遠い。
日帰りで気軽に帰ることができない距離のところにある。
だから、ゴールデンウィークや夏休みなどに長期で帰るようにしている。
ある日、実家から戻って来ると、姑からこう言われた。
「そろそろ楽させてもらいたい。」
要は、ご飯を私に作ってほしいということだった。
急に言われて戸惑ったが、
これがなかなか嬉しい提案だった。
というのは、今までは姑が料理中、ずっと後ろで待機していなけらばならなかったが、
その気遣いが無くなったのだ。
私が料理している最中に姑が後ろで待機するのかな、と思ったが、
さすがに、それは無く、姑は別の部屋でテレビを見ていた。
でも、その方が気楽。
最初こそ、姑仕様の台所道具と調味料にまごつくことがあったが、
徐々に私の使いやすい台所道具を買い集め、
調味料は古いものを使い終わると、
私の好きなものへと替えていった。
台所が私の領域に代わっていったのである。